交渉参加の1人が死亡でスパイ疑惑も… 3回目の交渉の行方は

交渉参加の1人が死亡でスパイ疑惑も… 3回目の交渉の行方は

ウクライナとロシアの3回目の停戦交渉が始まると発表されました。交渉をめぐっては参加していたウクライナ側の男性1人が死亡。ロシア側のスパイだったという報道もあり、交渉の行方は不透明です。

■3回目の停戦交渉始まるか・・・平行線の様相も

ウクライナとロシアによる3回目の停戦交渉について、日本時間の3月7日午後11時から始まるという情報は、ウクライナ代表団の1人がツイッターに投稿したものです。

一方、ロシアメディアは、ロシアの代表団はポーランド国境に隣接するベラルーシ西部ブレスト州に到着したと伝えています。

また、ベラルーシのメディアによると、ウクライナ代表団も現地に到着したということです。

これまで2回行われてきた停戦交渉。ウクライナ側が即時停戦を求めたのに対し、ロシア側は武装解除を要求。両者の主張は平行線をたどりましたが、市民が避難するための「人道回廊」の設置については前回合意していました。

ただ、ロシアとウクライナ双方が「相手側が攻撃を停止していない」と非難し、度々延期。

ロシア国防省 報道官
「停戦が報告され、6つの人道回廊が開かれます」

ロシア国防省は、日本時間の3月7日夕方、ウクライナの首都キエフや第2の都市ハリコフなど6か所で一時的な停戦に入り、人道回廊を設置すると発表しました。

ただ、そのルートが主にウクライナ国内からロシアやベラルーシに抜ける形となっているため、ウクライナの副首相は、ロシア側の提案を拒否し、別の人道回廊を設置するよう求めているということです。

■「特別な任務遂行中に」停戦交渉出席の男性死亡 スパイ疑惑も

こうした中、停戦交渉の場に同席していたウクライナ側の男性1人が死亡していたことがわかりました。

1回目の停戦交渉に参加していた、デニス・キレーエフ氏。ウクライナの国防省は、「特別な任務を遂行中に死亡した」と発表しています。

キレーエフ氏をめぐっては、様々な情報が飛び交っています。ウクライナのネットメディアは、かつてスパイ罪の容疑者だったと伝えているほか、イギリスのデイリーメールは、ロシアとウクライナの双方が「キレーエフ氏がスパイだったと主張している」と報じています。

■民家に迫るロシア軍 犠牲者には子どもも

「きのうの子どもはどうだった?」
「悪かった。子どもたちや市民の遺体を運んだりした」

ロシア軍が迫る首都キエフ近郊の町・イルピンで撮影された映像では、多くの避難する市民の姿が映し出されています。

そのとき・・・道路にロシア軍のロケット弾が着弾したとみられます。着弾したあと、倒れこんだ男性を助けに向かう様子も撮影されています。

AP通信によりますと、イルピンでは6日、子どもを含む8人が死亡したということです。

ウクライナ ゼレンスキー大統領
「イルピンで家族が殺された。男性、女性、子ども2人です。道路のそばで、射撃場のように」

イルピンでは、ロシア軍によって多くの民家が被害を受けています。街には砲弾の音が鳴り響いている状況です。音が鳴り止むのを待ち、背後で町が燃える中、住民たちは荷物を抱えて必死に避難します。中には、小さい子どもを抱きかかえる人も・・・

その避難中にも、容赦なく砲撃の音は続きます。住民は兵士に付き添われながら避難を急ぎます。

■進軍の様子を公開 ロシア軍の今後の展望は?

黒い煙が広範囲に上がるのは、キエフ近郊の貨物倉庫。ロシア軍の攻撃は日ごとに街を破壊していきます。

キエフの電光掲示板には「ロシア軍 あっちに行け」との表示が出ています。

ウクライナ軍がキエフの街を守っています。撮影された映像の中で、タイヤの脇には火炎瓶とみられるものがあるのが確認できます。肩に担いで戦車などを破壊するロケットランチャーも。

ウクライナ軍の兵士
「私たちは検問所の準備をして、すぐに対応できるように準備を進めています。全てがうまくいくでしょう」

強気の発言をするウクライナ兵ですが、強力な武器は映像からは確認できません。
一方、ロシア側はキエフに進軍する様子を公開しました。戦車が次々と進んでいきます。また、戦闘機の映像も公開。空爆する様子も披露しました。

ロシア軍の侵攻から11日現在、戦況はどうなっているのでしょうか?
アメリカ国防総省はの高官は、ロシア側が集結させていた戦力の約95%をウクライナ国内に投入したとの分析を明らかにしています。

防衛省防衛研究所 高橋杉雄 室長
「キエフに対する突入というのはおそらく性急には行わないと思います。市街戦というのは攻める側にも膨大な死者が出るので」

専門家は、停戦協議を重ねている間に、ロシア軍はキエフに侵攻するための準備を整えている状況だと分析しています。

防衛省防衛研究所 高橋杉雄 室長
「北部の部隊の補給状態が改善して、本格的にキエフ近郊に迫る状態。かつ、東側のハリコフから急行しているロシア軍部隊がキエフ近郊に到着した段階。そのあたりがキエフに本格的な攻撃が始まるタイミングだと思います」

■度重なる核施設への侵攻 プーチン大統領の主張

今回、ロシア軍の行動で際立っているのが、核関連施設への侵攻です。3月4日にはヨーロッパ最大級の「ザポロジエ原発」を攻撃し、制圧しています。

原発内部で撮影された映像では、施設の天井に穴が空いているのが確認できます。

侵攻直後には、世界最悪の原発事故を起こしたチェルノブイリ原発も制圧しています。さらに・・・

ウクライナ原子力規制当局
「ロシアが再び核へのテロ行為を行った」

ウクライナ当局は、ハリコフにある物理技術研究所がロシア軍のロケット砲による攻撃を受けたと発表。施設には研究用の核燃料があるとされています。

ロシアの狙いはどこにあるのでしょうか?

ロシア プーチン大統領
「彼らは(核兵器を)作り欧米は支援するだろう。見過ごすわけにはいかない」

プーチン大統領は、ウクライナ側が核兵器を保有しようとしていると主張しています。一方、ウクライナ側はこの主張を、ロシアが拡散している数多くの偽情報の一つとしています。

■「空襲警報が鳴っている」首都キエフの現状は

キエフ在住 高垣典哉さん
「今、空襲警報が鳴っています。人はもう全然外に出ていません。もうかなり人が少ないです」

キエフ中心部に住む高垣典哉さんは、今はほとんど部屋で過ごしているといいます。

キエフ在住 高垣典哉さん
「卵とかも大量に買ってきて。久しぶりも卵焼きが食べられましたよ。もう買えるだけ買って冷蔵庫に詰め込んでるっていう状態です」

スーパーなども営業時間が限られ、並ばないと買えない状態だといいます。

キエフ在住 高垣典哉さん
「開店2時間前から並んでいる。パンとか、僕らが行った頃には全然ない」

道路にはいたるところに、ロシア軍の進軍を妨げるバリケードや検問があるといいます。

キエフ在住 高垣典哉さん
「橋の入口、出口至る所に(バリケードが)あって、警備兵が立っているんですよ」

■戦闘が変える教育の現場

モルドバとの国境にあるウクライナ西部の街。戦闘の前線からは離れていますが、小学校では・・・

秋場聖治 記者
「こちら学校の体育館になってるんですけれども、見てください。地元の人、特に女性中心に迷彩ネットを作ってます」

漁師から寄付された網で作られた迷彩ネットは、軍用車両などを隠すためのものです。

国外に脱出しようとこの街にやってくる人たちも日に日に増えていて、学校は受け入れセンターの役割も果たしています。

キエフから家族と避難してきたボグダンくんは今、通常の授業を受けることもままなりません。将来の夢を聞くと・・・

キエフから避難 ボグダンくん(12)
「まだ分からないけど、できれば建築家になりたい。僕、学校の成績は良いんです」

ロシア軍の侵攻で、教育の現場も一変しました。

(08日00:20)

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